全国指導者研究会

 6月3日~6日にかけ、長野県松本市のまつもと市民芸術館主ホールにて行われました。全国の各楽器科指導者が一堂に会し、共通のテーマを基に研究発表しあい、各科教授の講義と基調講演を聴き各自の指導の核となる部分をあらためて確認しました。 鈴木先生が眠る松本という土地柄、山々に囲まれた美しい自然を間近に感じながらの研究会で、日々のレッスンに向かうエネルギーを蓄えてきました。

 研究会プログラムの中で特に印象的だったのが基調講演の土屋秀宇(ひでお)さんの講演でした。鈴木先生著書の「愛に生きる」と出会い、自身が携わっている幼児教育プログラムへ強く影響したとおっしゃっていました。
 講演の中で我々も常に意識している内容で、昨今日本が抱える問題の一つでもある子供たちの発達障害、ADHD、自閉症、学習障害増加について、1965年当時で1/10000人だったのが2015年では1/15人という診断結果が出ている、しかし発展途上国ではとても少ない、、、なぜか。教員人生で出会ったそのような子供たちがなぜそうなってしまっているのかということを科学的に、そして自身の研究の日本語・言葉がどのような影響を与えているかをお話しくださいました。

 また、本会会長である早野龍五会長と東京大学大学院総合文化研究科教授の酒井邦嘉先生、本会フルート科教授でもあり神経科学研究に携わった日本における”脳”の方々による鼎談(ていだん)にて、スズキが科学的に証明されている最前線を知ることができました。「音楽教育と脳科学」と題して幼少期よりスズキで楽器に触れ高校まで続けている生徒たちとスズキ以外で続けている生徒、そして10歳以降に始めた生徒による3つのグループに分けたMRIによる脳の反応のデータを講義くださいました。それによると一目瞭然の結果があり、詳しくは省きますがスズキで幼少期から続けた場合の脳に大きな違いがありました。「言語脳科学」と「音楽」には密接した関連があるそうで、そのことについても詳しく説明いただきました。これについては機関誌第200号より連載中の 「脳と才能」 をお読みください。

 鈴木鎮一先生がスズキ・メソードを提唱されてはや70年以上が経ちました。時代を先取りしていたスズキは各分野の科学の進歩とともにようやく証明されようとしています。なぜ音楽なのか、なぜ幼少期(胎児も含む)なのか、そしてその周りの環境がなぜ大切なのか。
 私も耳にしたことがあるのですが「スズキは宗教のようだね」という言葉に対し、鼎談の面々は口をそろえて「スズキは科学です」と答えていました。
 上記の講演を聴き、母語教育法がいかに自然であるか、そして全世界の共通の言語である音楽を取り入れたスズキ・メソードがいかに人間育成にかかわっているか。鈴木先生はまさに慧眼だったと強く感じました。